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コヤサンのぽつぽつしたブログ

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書) 読了

 写真資料なら幾度も見たことがあるはずなのに、カラーになるとこんなに違うのかと驚嘆した。まるで現在に撮られたような写真すらある。
 まえがきの着色の工程も構成が素晴らしい。
 感想として言葉になるのはこのくらいしかないのだが、受けるインパクトや印象変化は言語化できないほどの衝撃があるのでぜひ一読を。

 また、これを読みながら原爆の被爆遺品写真集『ひろしま』を思い出した。こんなふうに着ていたのだろうなと、故人を思う。
関連自ブログ記事

 分厚くて半分くらいは1945年に割かれているが1941年までの写真もありで、フルカラーで1,500円+税はぶっちゃけ安い。
 参考資料としても時代を〈知覚〉するための資料としてもオススメです。

https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334044817

ご紹介いただきました

 なんと「はてなブログ」さんのXアカウントで、前回の記事「映画『侍タイムスリッパー』鑑賞」のご紹介がありました。

https://x.com/hatenablog/status/1852878363460858195?t=hLCvgIVZgvDk1l5Xy67jTQ&s=19

 ただいまほぼ留守なのでスパムアカウント対策にXアカウントに鍵をかけている状態なのですが、通知をみてびっくらこきました。
 スターをつけてくださったり、読者になっていただいた方ありがとうございます。
 ふだんは大したことないことを書いております。けれども、おかげさまでした。嬉しいです、へへ。

 また、『侍タイムスリッパー』は本当に素晴らしい映画です!!
 歴史のメタネタとしても時代劇への追想としても、もちろん物語としてもたいへんに心を動かされました。
 重ねてですが、ぜひご覧いただきたいな、と思います!! ぜひぜひ!!

以上、おのぼりさん記事でした。

映画『侍タイムスリッパー』鑑賞

※当然のようにネタバレのある投稿です


 いま各所で話題の映画『侍タイムスリッパー』を鑑賞してきた。

 いやあ……私の中では2024年で一番の傑作だろうなと思う。
 今年は『オッペンハイマー』に『関心領域』、『骨を掘る男』……旧作だが『アンダーグラウンド(通常盤)』も観た。どれにも共通しているのは「戦争」という要素だが、本作は時代は異なって幕末→現代というタイムスリップ・フィクションだ。
 そう、バチバチのフィクションだ(根底には国内での戦争が潜んでいるが)。
 だが、おそらく今年の中で最も私の心を動かし、掴んだのは本作だろう。

 映画のあらすじとしては、時は幕末。会津藩より遣わされし侍ふたりが長州藩の侍の暗殺のため剣を抜くが、猛烈な雷に打たれ高坂は現代へとタイムスリップしてしまう。当惑しながらも、ひょんなことから彼は時代劇の「切られ役」として頭角を表していくことになるが──? といったもの。

 本作を鑑賞している間、だいたいずっと泣くか笑うか驚くかしていました。風見の正体がわかった瞬間とか、隣に誰かいたら顔を見合わせながら肩叩いてたレベルで口に手を当ててお手本みたいに驚いてました。そんなことってある!?

 ある!!!!!!!『侍タイムスリッパー』ならね!!!!!!!

 いやなんかもう、コミカルで笑えるのにこの重たい涙ほんとう何……になる……。何……?
 中打ち上げのシーンとか、「あの時代を生きたものをのこす」みたいなこと言ってそれでもうウルッときて、その後にちょっとコミカルな流れが来て笑ってそこから高坂殿が幕末の会津藩の顛末を知ってしまうところでもう情緒バキバキですよね。なんの耐久試験を受けさせられてるんだ。
 風見(山形)の、今でいうPTSDのような感じというか……そこもかなり重かったし、乗り越えた殺陣のシーンで、ああ……山形殿はこうしてやりたかったんだろうな。とか思ったらもう涙止まんなくってぇ……。
 あと、真剣を使って殺陣をすることを高坂殿が提案した時の風見の涙目からの落涙で泣かない人間おる? おらんやろ!※個人の感想です

 私たちはあの時代を生きた
 いつか忘れられる、しかしそれは今ではない
 これからも生きねばならない

 どうやったら泣きながら画面見られますか──……?
 ラストシーン、高坂殿が現場入りしてからラストまで、もうずっと泣いてるし嗚咽堪えるの必死すぎて大変なことになりましたよ! ねえ! あたしの情緒めちゃくちゃですよ!!!!
 ちなみに、オチは予測可能回避不可能でしたね(笑)早く再会してほしい。


 その……本作がなぜ今年一番私の心に刺さったのかというのが、上述にもあるのですが「生きてきたものをのこす」こと、「いつか忘れられる(しかし今ではない)」という部分でして。
 私がこの二つのキーワードで目の前が見えなくなるほど泣いてしまったのは、まごうことなく<ヒロシマ>というものを重ねて見てしまったから、でした。
 日ごろ考えたり突き動かされているものに対して、今年観たどの映画よりもダイレクトに心にはたらきかけてきたと言いますか。おそらく<ヒロシマ>というものだけでなく、これまで忘れられてきたものや忘却に抗った・抗っているものや人を想って重ねて涙になったのだろうな、と思うのです。

 皆さんは『ひろしま』という映画をご存知でしょうか。
 近年になり、ようやく本邦で無料有料問わず公開されたこの映画は、1953年──つまり広島に原爆が投下された8年後に製作された映画でした。当時、世界では公開され大注目された作品でしたが日本ではアメリカに気を遣っての(…)未公開、幻の映画だったのです。
 この映画に参加したエキストラの市民はほとんどが当事者、いわゆる被爆者でした。そのため、原爆投下後の生々しい実情や放射能による被害、当時も毎年何万と死んでいた白血病の問題。そう言ったものを全て知る人々によってつくられた映画でした。

 本物の侍が、いつか忘れられないために「時代劇」をのこして生き続ける。
 被爆当事者が、いつか忘れられないために「映画」をのこして生き続ける。

 そんな構造に重なるところもあって、泣くに泣いたのでした。
 いやでも本当に……高坂殿が自身がタイムスリップして、幕府滅亡から140年という現実を受け容れ始めている段階で、幕末明治維新において会津藩がどのような仕打ちを受けたのか、「映画の台本で知る」シーンはかなりキツかった。あんまりにしんどかった。
 また、自身も「歴史から創作するもの」それは「忘却への抵抗」であるというのもあって色々と身につまされるところもあったり、先述の通り共感して涙なしではいられないところもありと、実にすさまじい映画でした。

 エンドロールのスタッフのところも賞賛。終わったとき思わず拍手しそうになりました。(すれば良かったのですが、周りが静かだったから恥ずかしくて勇気が出ず、心の中で大歓声の大拍手をしました)
 すごい。パンフレットの思いの丈もすごくって、こんな素晴らしい映画を創ってくれてありがとう……の気持ちでいっぱいになりました。

 公開劇場が少ない映画ですが、もしお近くもしくは足をのばせる方はぜひ劇場で『侍タイムスリッパー』を<体感>してください。配信始まったらみんなで観たりもしたいな……。
 ということで、所感でした。たいへん素晴らしかったです……!

■関連リンク
▷『侍タイムスリッパー』作品ページ
https://www.samutai.net/
▷映画『ひろしま』主要記事
https://note.com/inoue_tsukioka/n/n4a60b77002f8